ご自分でユアセルフ | 山本清風のリハビログ

 性器を擦るのみに於いて他人に迷惑を掛ける必要がない。
 性器を擦ることに他者を介す必要はない。
「だからおまえは孤独なんだ」
「またおまえか。性器を擦りながらひとに語りかけるなよ」
「だからおまえは処女なんだ」
「処女と孤独が等価値とはなかなか情趣があるじゃないか。おまえは性器を擦って友達百人できたのか」
「俺が訊いてるんだ」
「性器を擦るのをひとに報せる必要はない。私には性器を擦り合わせる必要がない。みているとおまえは性器を擦り合わせる了解にばかり気をとられているようみえるが」
「これはな、メタファーなんだ。これはな、コミュニケーションなんだよ。これが人間なんだ」
「処女と孤独と人非人が等価とはおまえなかなか趣きがあるじゃないか。性器擦る故におまえ在り、というわけだな」
「性器を擦り合わせることによっておまえは誕生したんだ」
「私を私たらしめているのは性器の擦り合わせ。とでも言いたいのか?」
「ひとは土から離れては生きていけんのだぞ」
「ひとはいずれ土に還ってゆくかも知れんが、土から芽を出したわけではあるまい。〝それでも生きている〟私はそう言ったはずだ」
「いきそうだ」
「私はそんなこと訊いてないぞ」
「いく、ということは生きてゆく、ということだ」
「睡眠同様くり返されるちいさな死、逆説的におまえは生きているというわけか」
「もう限界だ」
「我慢するくらいなら死ねばいいだろ。死ね」
「臨界(いく)…」
「逝くと生くが同音異義というのは有休が悠久ではないくらい皮肉だよな」
「対義というのは両極の端と端とで円環を結ぶものなんだよ。貴様が敬意から敵意へと、手前やわれが自分から相手を指す言葉へと変容したように」
「医者が患者となったようにな。片づけておけよ、そこ」
「臨界(い)っちゃった…」
 床を擦るのみに於いて他人に迷惑を掛ける必要がない。
 床を擦ることに他者を介す必要はない。

 

 

 

 てめえでやれ。